最近知った のですが、 青田八葉さん という氷見市在住の小説家が2009年の末に「ピーチガーデン」というライトノベルで角川スニーカー文庫からデビューしています。富山県出身の小説家は何人もあげることができますが、たいていは東京など県外で仕事をしており、県内にとどまって執筆活動を続けているというのはかなり珍しいのではないでしょうか。 しかし、県内で活動して郷土愛を感じさせる作品を発表しているにもかかわらず、氷見の明文堂書店や高岡の文苑堂書店ですら特別扱いは受けられていません。ラノベの新刊は大量に発行されるので仕方ないのかもしれませんが、在庫があったとしても棚の一等地には置いてもらえていなくてちょっとかわいそうな気分になってきます。これまで発表されたのは「ピーチガーデン」シリーズ全3巻で、6月に発行された3巻目で完結しています。このシリーズは富山県呉西の人なら間違いなく楽しめると思います。特にかつて 越中中川 を高校通学に使っていた人や、氷見高校を卒業した人におすすめします。 ラノベとしての出来は、私も論じられるほど数を読んだことがないのですが、第14回スニーカー大賞優秀賞が保証してくれるはずです#1 #2。 富山県民としてまず嬉しい点は、舞台として非常にリアルな氷見、高岡が描かれているということです。大都市や有名観光地なら「新宿鮫」や「池袋ウエストゲートパーク」など自分のよく知る街で繰り広げられる、地域密着型の奇妙な物語を楽しむことが簡単にできますが、地方ではなかなかそういう機会がありません。高岡で有名な木崎さと子さんの「青桐」にしても、高岡駅からタクシーで10分ほどの田園地帯らしいので、野村とか長慶寺のあたりを想像して読んではみますが細かな描写はなく、物足りなさが残ります#3。その点描写の多い「ピーチガーデン」なら、そんなところでキスしていたら生徒や一般教員からは見えないだろうが校長室から丸見えだろうとか、三人目のヒロインの家は東下関かな?みたいな補完をしながら読めたりします。 もうひとつ面白い点は、登場人物が地元の人が「氷見の人ってこうだよね」と思っているであろう性格になっていることです。主人公のロックな兄貴がその典型でしょうか。近年の氷見を舞台とした漫画には原秀則さんの「ほしのふるまち」もあり、これは風景や方言の描写は素晴らしいのですが、登場人物が...